(続き)
このように検討してくると,やはり,今回の判決に誤りがあることは明らかであると考えられ,これを是正するために控訴した(なお,本件調査嘱託はすでに訴外人(詐欺行為を行った者)に対する判決の確定によって当該事件においては回答を求められている状態にはないので,確認請求に係る控訴の趣旨は,過去の法律関係の確認を求める趣旨に変更している。今後訴外人に対する再度の訴え(債務名義に住所地が記載されていないものについてはこれが記載された新たな債務名義を求めるべく再度給付の訴えを提起する利益があり(東京地判平成23年11月21日先物取引裁判例集64巻439頁),その訴えにおいても同旨調査嘱託をすることとなることなどからして,被害者には,その確認を求める(少なくとも中間確認の訴えにおいて確認を求める)利益がある(大判昭和8年6月20日民集12巻1597頁は,中間確認の訴えにおいては過去の権利や他人の権利をも対象としうることを明示的に判示しているところである。)。
ソフトバンクがこの種調査嘱託に応じない理由の一つは,裁判所が明示的に主文において判断を示さないことにも求められるだろう。裁判所の判断に従うという体裁をとれば,民事刑事の責任を免れうることとなり,リスクを大幅に軽減させることができる。ソフトバンクもまた,裁判所が主文においてその判断を示すことを望んでいるものと思われるのである。本件訴訟には,そのような機能があることには正しく想到されなければならない。
この論点は,現在多くの関心を集めており,今年の東京弁護士会の夏期合同研究のテーマにもなっている。私もパネリストの一人として,本件訴訟などについて発言することになっているが,そのときにはまだ控訴審の結論は出ていないだろう(控訴審は始まってさえもいないかも知れない。)。
多くの方面からご意見,情報などをいただいている。この場をお借りしてお礼を申し上げたい。