判決報告3つ

 ご報告が延び延びになっていましたが,4月最終週には3つの良い判決があり,気分良く連休に入ることができましたので,振り返って再度いい気分に浸らせて下さい。判決は,いずれも,参考価値のあるものと思います。

1 まず,東京地判平成24年4月23日。121ファンド商法の中間代理店らの責任に関するものです。
 いわゆる121ファンド商法の中間代理店であった者らの責任について,被告らがした,自分も被害者であって現に出資している,賠償責任を負うとしても自己が得た利益の限度に限られるべきであるとの主張を,「原告から預かったFX証拠金をFXの自動取引で運用することにより月利2から3%の運用利益を得ることができるという内容のものであり,しかもそれにより勧誘をした被告前田についても原告から預かったFX証拠金に対して月3%もの割合の報酬を得るというものである。このような取引が,およそあり得ない荒唐無稽のものであることは明らかであるから,被告前田は,FXの自動取引で運用しているとの内容が虚偽であることを知っていたと推認され,仮に虚偽であることを知らなかったとしても虚偽の勧誘をするにつき過失があったことは明らかである。」,「被告前田自身が121FUNDで資金を運用していたとしても,上位の代理店として運用利益を挙げる一方,勧誘する下位の者には損害を与える可能性を認識していることもあり得るから,そのことが上記認定の妨げになるものではない。」,「被告前田を原告との関係において121商法の被害者であると評価することはできず,原告の被告前田に対する損害賠償請求を被告前田の得た利益12万円の限度に限定すべき理由もない。」として排斥し,損害賠償請求を全部認容しています。
 このような反論がなされることは多くありますので,これをばっさりと排斥した本判決は(当然のことを指摘しているに過ぎないといえばそうかも知れませんが)被害救済実務に大いに参考になるでしょう。

2 次に(日にち順に紹介します)東京地判平成24年4月24日。海外ファンドへの出資名目で資金集めをしていた東京プリンシパル・セキュリティーズ・ホールディング(株),New Asia Asset Management(株),Mongol Asset Management(株),役員ら,実質的支配者の責任に関するものです。
 先に紹介した東京高判平成23年12月7日の流れに沿うものであり,金融商品の性質自体から違法性を導いています。オーシャンズファンド及びキプロスファンドについて「不明確で,かつ著しく大きなリスクを有する投機性の高いファンドであったというだけでなく,出資者から契約手続等報酬の名目で金員を徴収し,出資者の利益を犠牲にして被告東京プリンシパル関係者の利を図ることを意図して組成,運用されていた,出資者の利益を損なう不適正な金融商品であったと認めるのが相当である」と断じ,モンゴルファンドについては「出資金をモンゴル国内での資源開発における重機等のリース運用等に供し,そのリース運用等により生じた収益を出資者への配当に充てるという基本的枠組みすら逸脱する形で販売等されていたというべきであるから,出資者に適切に損益を帰属させる前提を欠いた金融商品であったと認めるのが相当である」と断じています。従前は,あからさまな詐欺商法においても説明義務違反などの主張が無批判になされていたきらいがあるようにも感じられることがありますが,そのような姿勢にはやはり違和感が否めません。本判決のような判断及びこれに至る過程は,金融商品まがい取引の違法性を論じるにあたって参考になるものと思います。

3 東京高判平成24年4月26日。商品CFD取引(まがい取引)を行っていた(株)プロフトラストの従業員の責任に関するものです。会社や役員らに対する判決はとっくに確定していますが,要領を得ない控訴がなされたのが本件です。
 本判決は,本件取引が仲介取引であることを前提とする主張は前提を誤っており,このような取引は市場価格の範囲内で行われているものであっても,まさしく「偶然の事情によって利益の得喪を争うもの」であるとした上,担当であった時期の損害についてのみに責任が限定されるべきであるとの主張(当該従業員が担当であった時期には100万円程度しか損失が現実化していませんでした)を,「本件取引は前記のとおり公序良俗に違反する違法な取引であり,プロフ社は,組織的な営業行為としてこの違法取引を行っていたものであり,同社が比較的小規模な組織であると見られることも考慮すれば,各従業員がそれぞれプロフ社の組織の一員として同社がかかる営業行為を行うことを支えていたということができ,各従業員は,ある顧客を直接に担当していたといないとにかかわらず,従業員という立場でプロフ社の会社ぐるみの違法行為に加担し」たとして排斥し,(直接の利得の帰属主体ではない)従業員個人に対する請求について,最判平成20年6月24日に照らしてスワップポイントとして支払われた金額を損害から控除しないという原審の判断も維持して控訴を棄却したものです。