かつての未公開株商法においては,販売業者の責任はともかく,株式発行会社及びその役員らの責任は,両者の関係性が不明確であったこともあって,否定されることが多かった。
平成19年ころがその境界線であり,それ以降は関係性を様々な証拠から認定する裁判例が大勢となっているように(感覚的にではあるが)感じられる。今回問題となったのは平成15年の被害事案であり,「銘柄」は相当数の苦情があった「株式会社マリン技研」である。判決(東京地判平成24年11月15日)は,閉鎖会社であるマリン技研が頻繁に増資の登記をしていること,販売会社の代表者を無限責任組合員とする組合や同組合の会長と称していた者に株券を発行して交付したが,当時の発行済み株式総数の約70%にも上る交付株式の全てが1株ごとに(大量に)発行されていること,マリン技研は上記組合らを消費税確定申告書の同族会社の判定に関する明細において株主として表示していないこと,他方で上記組合らに会社の事業状況を示す資料を交付していること,を適切に指摘し,「被告会社は,具体的な上場の予定がないのに増資を繰り返して転売を予見し得た株券を大量に発行したのであるから,その発行した大量の株券に表示された被告会社の株式について,上場等の具体的な事情や未公開株の適正な評価に詳しくない者に対しても販売勧誘がされ,その際,転売しようとする上記各組合ないしその依頼を受けた第三者から,場合によっては虚偽の上場予定を告げるなど嘘を言ってでも未公開株の販売がされるという未公開株商法の事態が発生しうることは,容易に予見可能であったと認められる。」としてマリン技研及びその取締役らに対して損害賠償を命じた。
この裁判所は,いつもながら簡潔であるが当を得た判決をされる。今回の判決もそうである。販売組織と発行組織の「関係」を拾うヒントを与えてくれるものでもある。