判決報告(証券取引の二次被害・探偵業者)

 少し前のことになりますが、証券取引の二次被害ともいうべき事案で先日判決がありましたのでご報告します。

 証券取引による損害(2500万円程度)の回復を希望していた女性(70代)が、損害を回復してあげるからと言われ、調査会社(探偵業者)に約370万円もの「調査費用」を支払わされたという事案です。

 本件の争点は、実質的な契約内容が、証券取引の損害回復であったか、従業員の勤務場所調査にすぎなかったか、という点でした。
 被告らは、契約書上、「○○証券従業員●●の勤務場所調査」としか書いていなかったことから、依頼された調査はそれのみであるし、実際にその従業員の調査をして依頼者に口頭で報告した、と主張しました。
 こちらとしては、実際の依頼内容は証券取引の被害回復であったが、それでは弁護士法に抵触するので、契約書上、従業員の勤務場所調査とあえて記載したのだとの主張を行っていました。
(証券取引の損害回復に向けた行為は、「法律事務」に該当しますので、このような行為を弁護士あるいは弁護士法人でない者が行うことは、弁護士法72条違反になります(司法書士法等の例外を除く)。)

 判決では、従業員の勤務場所調査としては高額にすぎること、当時原告が自分で申し立てていたあっせん手続において600万が提示されており、原告はこれを上回る金額を回復できると判断して本件契約を締結したと推認されること、証券会社の従業員の勤務先が分かったところで損害回復には直ちにつながらないことから、原告は勤務場所調査のみであると認識して金員を支払ったとは到底解されないと認定し、これらの事実と、契約書に「成功報酬は14%とする」と記載してあり、原告の証券損害2500万円の14%が350万円であること(税込でちょうど367万5000円)から、代表取締役A(以下「A」)は、原告に対し、被告会社ないしAにおいて本件証券損害を回復することができる旨を説明し、具体的な回復見込額を提示したうえでその14%相当額を成功報酬額としたものと解するのが相当であるとしました。
 そして、これらの事実と、被告会社の料金体系に反して前払いをさせていること、仮に被告らのいうとおり勤務先の調査報告をしていたとしても、多額の費用の支払いを受けながら調査報告書すら作成せず、路上における口頭報告にとどめること自体が探偵業者の行動としておよそ考え難いものであることなどの事情を併せ考えると、「Aは、原告から調査費用名目で多額の金員を詐取することをもくろみ、・・・原告に本件証券損害の回復を持ち掛け、その回復見込額を基準とする成功報酬額を提示しつつ、契約上の受任内容については巧みに調査業務にすり替えたうえで本件契約を締結し、被告会社によって本件証券損害の回復がされるものと信じた原告から金員の支払いを受け、これを領得したものと推認することができる。」として、被告会社・代取Aの共同不法行為責任を認めました。

第1審判決:平成24年11月30日、東京地裁民事第44部、一部認容(会社・代表取締役につき認容、役員2名につき棄却)。
会社及び代表取締役控訴。
控訴審:平成25年4月17日、東京高裁第11民事部、控訴棄却。

 証券会社の言うままに取引を何年も重ねていった結果、甚大な損害が出ていることはわかったものの、どこに何をどう依頼してよいやらわからず、あちこちに相談しているうちに、知り合いに「あそこの探偵が良いわよ」と言われて依頼してしまい、結局さらなる被害に遭ってしまったという事案でした。