特殊詐欺事案では、口座名義人が、通帳やカードを紛失したのを知らぬ間に悪用されていた旨の主張をすることがしばしばある。
しかし、通帳等を紛失したとしても、暗証番号やパスワードがなければ口座の(不正)利用は不可能であって、第三者がこれらをただ拾ったとしても、悪用することは不可能である(公知の事実である)。
さらに、この種特殊詐欺の犯行グループは、口座凍結の危険性を常に考えながら犯行を行っており、自らの計画と無関係に口座が凍結されるリスクをあえて冒すことはないのは常識に照らして見やすい事柄であるところ(銀行口座など極めて安価に調達できるのが実情である)、口座名義人が紛失した通帳等に係る口座を口座名義人と無関係に使用すれば、紛失に気付いた口座名義人が犯行グループの口座利用状況とは関係なく金融機関に届け出ることによって口座の利用が犯行グループにとって不意打ち的に停止されるリスクがあるのであって、犯行グループが巨額の資金を収受するにあたってあえてこのようなリスクを冒すとは到底考えられない。
本判決は、この当然の事理を簡潔に示している。
また、口座提供行為者の賠償責任の範囲が被害者が被った損害全部に及ぶことを明示的に示した裁判例の一つでもある。
1. 特殊詐欺の口座提供者の責任
(東京地方裁判所令和6年9月27日判決) 特殊詐欺事案において、騙取金の送金先口座名義人に対して、犯行全体によって原告に生じた損害の賠償を命じた事例2. 口座提供行為者の責任の範囲
(東京地方裁判所令和6年6月6日判決) 特殊詐欺事案において、騙取金の送金先口座名義人に対して、犯行全体によって原告に生じた損害の賠償を命じた事例 3. 口座提供行為者の責任の範囲
(東京地方裁判所令和4年1月27日判決) 特殊詐欺事案において、騙取金の送金先口座の名義人の損害賠償責任を、口座への送金額に限定せず原告の被害全額について認めた事例 4.ミニッツカンパニー
(東京高等裁判所平成25年4月24日判決) 犯罪資金の連結関係のある口座名義人に犯行全体によって生じた損害の賠償を命じた事例 5.ロマンス詐欺のマッチングアプリアカウント転売者の責任
(東京地方裁判所令和6年12月20日判決) 特殊詐欺事案(ロマンス詐欺)において、マッチングアプリのアカウントを提供した者に対して、犯行全体によって原告に生じた損害の賠償を命じた事例 6.口座提供行為者の責任
(東京地方裁判所令和7年3月5日判決) 特殊詐欺事案において、紛失したキャッシュカードを悪用されたとの主張を排斥した事例
(東京地方裁判所令和6年9月27日判決) 特殊詐欺事案において、騙取金の送金先口座名義人に対して、犯行全体によって原告に生じた損害の賠償を命じた事例2. 口座提供行為者の責任の範囲
(東京地方裁判所令和6年6月6日判決) 特殊詐欺事案において、騙取金の送金先口座名義人に対して、犯行全体によって原告に生じた損害の賠償を命じた事例 3. 口座提供行為者の責任の範囲
(東京地方裁判所令和4年1月27日判決) 特殊詐欺事案において、騙取金の送金先口座の名義人の損害賠償責任を、口座への送金額に限定せず原告の被害全額について認めた事例 4.ミニッツカンパニー
(東京高等裁判所平成25年4月24日判決) 犯罪資金の連結関係のある口座名義人に犯行全体によって生じた損害の賠償を命じた事例 5.ロマンス詐欺のマッチングアプリアカウント転売者の責任
(東京地方裁判所令和6年12月20日判決) 特殊詐欺事案(ロマンス詐欺)において、マッチングアプリのアカウントを提供した者に対して、犯行全体によって原告に生じた損害の賠償を命じた事例 6.口座提供行為者の責任
(東京地方裁判所令和7年3月5日判決) 特殊詐欺事案において、紛失したキャッシュカードを悪用されたとの主張を排斥した事例