本判決は,当職らが知る限りでは,株価指数証拠金取引(くりっく株365)についての初めての裁判例である。
株価指数証拠金取引(くりっく株365)は,被害実態は先物取引被害と酷似しており,裁判例も違法性判断において先物被害と同様の判断過程をとっているが,同取引は金融商品取引法によって規律される取引であるから,本欄にも掲記しておく。
本判決は,被告担当者らにおいて本件取引の危険性(売買による損失の発生)のほか,取引を繰り返すことで多額の手数料を要することになる点についての説明が十分に行われなかったとして説明義務違反を認め,本件取引において特定売買を合理的であると評価させる事情は特に見当たらず,被告担当者から情報提供等を受ける代わりに高額の手数料を支払うこととなるコンサルティングコースでありながら,原告の損益にかかわる委託手数料について,被告担当者が配慮を払った形跡はなく,被告の手数料稼ぎのために,過当な頻繁売買が勧誘されたとして過当売買の勧誘の違法を認め,「本件においては,本件取引の危険性や手数料負担についての説明が不十分のまま,被告担当者らによって,意図的な手数料稼ぎのために過当取引が継続されたものといえ,発生した取引損失もすべて被告の手数料に相当するものであったこと,原告は,取引の開始後,本件取引による手数料負担が多額に上ることを自ら認識した後は比較的短期間に本件取引を終了させていることといった事情を考慮すれば,本件において,過失相殺をすることが相当とはいえない」と判示して請求を全部認容した。
同取引に関する(おそらく)初めての判決であること,手数料に着目した説明義務や過当性の評価をしている点など,参考になるものと思われる。
判決PDF
⇒金融・商事判例1494号金判SUPPLEMENTVol.91
⇒消費者法ニュース108号347頁
⇒証券取引被害判例セレクト51巻15頁
⇒先物取引裁判例集75巻205頁
(東京地判令和4年3月31日判決、東京高等裁判所令和5年11月8日判決) 「レセプト債」の証券化スキームにおいてSPC管理を受託していた会計事務所等の共同不法行為責任を認めた事例
2.大和証券
(東京地方裁判所令和4年3月15日判決) 大手証券会社である大和証券が、当時50代の主婦に対して、主婦が保有する有価証券を担保に合計9640万円の貸付けを行い(証券担保ローン)、当該証券担保ローンの借入金を原資として、仕組み債や投資信託など46銘柄の売買を繰り返し行わせた結果、全ての金融資産が失われた事案について、大和証券に対する損害賠償請求が一部認容された事例
3.静銀ティーエム証券
(東京地方裁判所平成23年2月28日判決) 銀行系証券会社によるノックイン型投資信託勧誘事案
4.アトランティック・ファイナンシャル・コーポレーション
(東京地方裁判所平成20年7月16日判決) ロスカット・ルールに関する重要な初判断
5.リソー教育
(東京地方裁判所平成29年3月28日判決,東京高等裁判所平成29年9月25日判決) 有価証券報告書等の虚偽記載等により生じた株価下落につき,株式会社リソー教育に対し,金融商品取引法21条の2第1項に基づき,第三者委員会設置の発表前に株式を取得した株主らについて,第三者委員会設置発表前終値から処分価格の差額を損害としてその賠償を認めた事案
6.アルファエフエックス
(東京地方裁判所平成22年4月19日判決) 区分管理を怠った業者の役員らの責任に関する判決
7.アーバンコーポレイション役員ら
(東京地方裁判所平成24年6月22日) アーバンコーポレイション事件の対役員らの判決
8.アーバンコーポレイション査定異議訴訟
(最高裁判所平成24年12月21日判決) アーバンコーポレイション事件の対会社の判決群
9.野村證券
(東京地方裁判所平成25年7月19日判決) 仕組債の時価評価についての説明義務違反など 10.幸せwin,大橋ひかる,マネースクウェアジャパン
(東京地方裁判所平成20年10月16日判決) 情報商材業者や,これを利用して集客していた業者の違法性を肯定したもの 11.KOYO証券
(東京地方裁判所平成28年5月23日判決) 株価指数証拠金取引(くりっく株365)について説明義務違反,過当売買の勧誘等の違法性を認め,過失相殺を否定して損害賠償請求を全部認容した事例 12.SMBCフレンド証券
(東京地方裁判所平成17年7月22日判決) 日経225先物オプション取引被害事案