判決報告(判例タイムズに掲載)+復活!今月の1枚

第1 判決報告(判例タイムズに掲載)

 昨日,SNS型投資詐欺事案において犯罪利用口座として凍結されている口座に対して不当執行を行った業者の別の被害者に対する責任を認めた判決(東京地方裁判所令和7年12月4日判決)が,判例タイムズ令和8年10月号(1547号181頁)に掲載されました。

 裁判例は,弊所のWebサイト「主な担当裁判例」に掲載してありますので,ご参照ください。
 https://aoi-law.com/article/han_sns/


1 当事者

A社:凍結口座の名義人

スタッシュキャッシュ:架空の貸金債権にかかる公正証書を得て債権差押をした者

原告:SNS型投資詐欺の被害者


2 事件経過(事の始まり)

 原告はSNS型詐欺被害に遭い、残金のあったA社の送金先口座について仮差押を申立てました。

 A社の預金債権に対して既に複数の仮差押がなされており、原告の仮差押に先んじてスタッシュキャッシュが公正証書に基づき当該預金債権の差押えを申立てて差押命令が発令されたため、原告の仮差押は間に合わず、配当加入遮断効により、原告は配当を受けることができませんでした。ただ、この時点で、間に合わずに悔しいとは思いつつも、不当執行が行われているとは思いませんでした。

 やるしかない!スタッシュキャッシュを債務者として供託金払渡請求権を仮差押した上で、スタッシュキャッシュに対し、原告の不法行為債権の侵害を理由とする損害賠償請求訴訟を提起しました。


3 訴訟経過

(1)争点について

・公正証書に基づき預金債権の差し押さえを申し立てる行為が、他の債権者(強制執行手続きで競合をしていない債権者)の権利行使を妨げたといえるか。

→被告に債権侵害の故意(害意)があるといえるか、どの程度の認識をしていれば故意(害意)があるといえるかが大きな争点となりました。

 この点につき、被告は、第三者の強制執行を妨害するという意図はなかった、同口座の強制執行により害される第三者がいると認識することはできなかったと主張していました。

(2)立証過程

①同種事件(請求異議訴訟、配当異議訴訟)を参照し、また、東京地裁にスタッシュキャッシュの強制執行が同時多発的に行われていることを弁護士会照会などを利用して調査し、そこには類似性、共通点があることを立証する。スタッシュキャッシュはこの間、不当執行を恒常的に行っていたといえ、その過程で生じたのが本件であって、その際、当該不当執行により他の債権者を害する意図を有していたといえる。

②本件の事情に着眼しても、本件公正証書は、スタッシュキャッシュが、令和6年3月22日に、令和6年3月25日を弁済期として貸し付けた4000万円について貸付日(令和6年3月22日)から1年も経過してから急遽作成しており、それはA社の口座に対して債権仮差押えが入った直後であった。また、債権額の4000万円が同口座の残高3420万9030円を上回る切りのよい金額となっている。

→以上からは、被害者による預金債権の仮差押えや差押を察知したスタッシュキャッシュが、同口座の金員を収受する目的で、A社と通謀し、実体の伴わない本件公正証書を作成して不当執行を行ったといえ、債権者を害する意図を有していたと主張。

(3)東京地方裁判所令和7年12月4日判決

 被告らの本件公正証書については、「被告が本件貸付けの事実を裏付ける具体的な主張・立証を一切しないことに照らせば、本件貸付けの事実は存在せず、本件公正証書は、架空の本件貸付金債権に基づく本件差し押さえを可能にするために作成されたものであったことが認められ」と判示しました。

 その上で、(1)の争点については、「架空の本件貸金債権に基づく本件公正証書を債務名義として強制執行の申し立てをすれば、正当な権利を有する他の債権者の権利行使を妨げることは明らかであるから、被告において、本件差押命令の申し立てをすれば、他の債権者の権利行使を妨げることを認識していたと優に認定することができる」と判示しました。

 これにより、被告の描いた架空の債権により被害金の奪取を企図する被告の思惑は、裁判という正当な手続きを通じて、しっかり封じることができました。また、被害金額も全額回収ができました。


4 判決を踏まえて

 荒井先生の判決があり、平澤先生の判決が続き、その上に立って、今回の判決に繋がりました。両先生からは様々な示唆を頂きました。ありがとうございました。

 この判決を報告すると、よくそこまでやるのかと聞かれますが、被告は、架空の債権を作り上げ、それにより被害金の奪取を図ったわけですから、そのような違法な利得は取り返す必要があります。だからこそ、そこまでやるのです。今回は、法律構成もさることながら、口座名義人という幇的的な関与者だけではなく、悪質な業者自体から、直接被害回復ができたのも良かったと考えています。

 
 そして、この事件は、先日弊所を退職された事務員さんと、様々な過程を一緒に取り組んできた事件でしたし、その協力がなければ実現できない結果でした。本当にありがとう。

 この職場で積み重ねた頑張りは、しっかりと成果となって表れています。そして、それは事件記録だけではなく、判例として外の世界にも残っていきます。きっといつまでも。

 新しい職場でも、自信をもって新しいことにチャレンジしていって下さい。頑張って!

 ただ…、そもそも、このブログを見ているかは分かりませんが(笑)。


第2 遂に復活!今月の1枚

 いや~、本当に、久しぶりです。

 過去を探ると、最後の今月の1枚が2020年2月14日でしたから、ブログ休刊期間は、実に2415日!

 全国の今月の1枚ファンの皆様(!?)、いかがお過ごしでしたでしょうか(笑)。

 まだまだリハビリ期間で、おいおい調子を回復していきたいところです。


 雨、雨、あめ。最近の天気に嫌気がさし始め、抜けるような青い空、輝く青い海の写真が撮りたい。

 そして、ブログ復活1号は、復活の列車で。訳の分からない信念に導かれ、向かった先は日本海、記念すべき被写体は、583系復活色の653系U101編成しかない。

 これ数字ばかりですが呪文ではないです、ただ細かく話すと、もう2時間スペシャルになるので、ここは割愛します(笑)。分かりやすくいえば、「伝統の583系物語 ver2.0」という感じですね。

 分かります、分かっていますよ、全然分かりやすくなっていないことは。

 夏の早朝、朝露にびちょびちょになり青草をかき分け斜面を直登していき、振り返って高台に立つ。

 「おおぉ~!」。眼下に広がるのは、鉄道ファンにとっての、超絶、怒涛の激アツ撮影地、「逆S字カーブの線路に大海原バック」なのでした。

 しかし、好事魔多し。列車の通過時刻が近づくにつれ、洋上に雲が大量発生、その雲に太陽が隠れると、一瞬にして風景は色彩を失い、海は灰色に…あ゙ぁ゙゙ぁう~。

 「一体何をしに来たんだ…」、そんな絶望的な煩悶の中、列車の通過時刻は近づきます。

 「ここまでか…」。しかし、遠方に列車の前照灯が見えたその時、なんと、太陽が厚い雲の合間から徐々に顔を出し始め、ファインダーの中の風景がすごい勢いで色彩を帯びていきます。

 「出ろ、出てくれ~!!」、最近、訳あってよく神社に祈願に行くのですが、その時なみに熱くお祈りしたご神徳か、列車が最高の舞台でポーズを決めたとき、太陽全開の激晴れとなったのでした。

 まさに、9回ツーアウトからの奇跡の逆転劇。鍛錬は千日の行、勝負は一瞬の行。

 その一瞬の勝負は、裁判でも、写真でも、絶対に諦めなかった者が最後は勝つ!

 これは、そんな思い出がいっぱいつまった写真なのです(笑)。 おしまい。

         いなほ1号(583系復活色) 羽越本線 小岩川-あつみ温泉