本日,株式会社パブリックライジングジャパン(PRJ)という業者が組成・販売したファンドへ出資し,損害を被ったとして損害賠償請求を行っていた事案で,認容する判決が出ましたのでご報告致します。
同種事件について,東京地判平成24年7月9日でも判断がなされており,それに続く判決になります。
本判決は,上記判決より,より端的にファンドの違法性を指摘した判断となっていることから,ご報告致します。
東京地判平成24年9月14日
【事案の概要】
近時のファンド商法でよく見られる,適当な高配当(年間配当30%)を恒常的に出す旨喧伝し,複数の運用委託先に分散投資をするなどと言っておきながら,結局特定の運用先(一社)に運用させており,それが失敗した(運用委託先の再委託先の個人が持ち逃げをした)などとして出資金の返還をしないという事案。
業者側は,運用委託先が分散投資をしていると言っているのを信用した,一定期間現実に高配当を受領し続けこれを投資家にも配当していた等と主張して責任を争っていました。
【判決の内容】
本判決は,PRJが組成するファンドは,
1.同社が出資者に説明した,複数の運用先で運用するという基本的枠組みを逸脱した運用をしており,この点で出資者に虚偽の説明をしていたといえること,
また,
2.被告らは,出資金を集め,運用委託先に運用させ,そこからPRJや出資者へ金銭を分配するというスキームを企画・立案していたにもかかわらず,運用委託先が行っていたとされる取引内容をほとんど確認することなく,月10%の利益を運用委託先が恒常的に上げ続けると信じた旨述べるのみで,今日に至るまで運用の実態は全く明らかにされないことなどから,
「破産会社PRJが組成したファンドへの出資により年間配当30%を恒常的に実現するのは到底不可能であり,破綻必至のスキームであるというほかない。」
「そうすると,破産会社PRJが,自己の組成するファンドが,真実は複数の運用先がないのにこれがある安全なものである旨宣伝し,かつ,実態の不明なスキームであるのにこれを秘し,ファンドへの出資により恒常的に高配当を得ることができるかのように宣伝して出資者から金員を集めたのは,出資金を詐取したものといわざるを得ない。」
と判示しました。
また,PRJは,出資者の出資金を詐取したものであること,今日に至るまでPRJは配当金が出資金のいかなる運用によって得られたものかの説明がないことなどを併せると,
出資者が受領した金員は,詐欺の手段として配当金名下に支払われたものであるといえるとし,これを損益相殺の対象として(損害賠償額から)控除することは民法708条の趣旨に反して許されないとして,(配当を控除することなく)不法行為に基づく損害賠償請求を全部認容しました。
【評価】
本件同様のファンドまがい商法をめぐる紛争は近時多発している傾向が強く見られます。
そのような中,
1.同商法のスキームは破綻必至なものである,
2.取引の仕組み及び運用内容が不明なスキームであるのにこれを秘して出資者から金員を集めたのは出資金を詐取したものである
とした本判決は,同種事件の解決にあたって参考価値の高いものと思われます。