本日,また少し風変わりな事件について損害賠償請求の訴えを提起した。少し前に新聞報道もされていた,「カラオケ著作権詐欺」事案である。今回損害賠償請求の名宛人としたのは,有限会社イノウエ,株式会社ウイングラボ,株式会社世界文化研究社,Zap合同会社及びその役員・従業員らである。
「カラオケ著作権詐欺」は,概要,「カラオケの権利」に藉口して不特定多数者から金銭を騙取することを企てた関係者らが,著作物の題号を「カラオケを創った男」とする著作権を登録し,アメリカ合衆国において「KARAOKE」なる著作物の「著作権」を登録し,これを2万に分割した上,2万分の1の持ち分を「1GaiB」と称して高齢者らに売りつける,というものである。
首謀者らは,販売に際し,いくつかの販売業者を用い,勧誘資料等を頒布しており,これらを見ると,「KARAOKE」なる著作物のアメリカ合衆国における知的財産権の持分(2万分の1の持ち分)は,著作物の題号を「カラオケを創った男」とする著作権の持分(2万分の1の持ち分)と同等の権利が保証され,前者を侵害した米国の企業からのライセンシングフィーから権利金が支払われると記載されている。また,「カラオケ著作権の仕組み」と題する,あたかもカラオケの利用の対価を得られるかのように,権利の名称を大きく「カラオケ著作権」と表示し,この持分を「出資者」に分割して譲渡し,権利金はあたかもカラオケ機器のメーカーを想起させる「機器メーカー」やカラオケを利用するものと想起させる「国内市場」,「海外市場」から,カラオケ使用の対価として「契約入金」を徴収しているかのように表示した書面も作成,頒布されている。
しかし,著作物の題号を「カラオケを創った男」とする著作権は,言語の著作物であり,「カラオケの機能,カラオケの仕掛け,カラオケの営業展開方法,カラオケシステムの今後の方向性」が記されているらしいが,わずか15枚程度の手書きのメモであるというのであり,常識に照らして,「投資」に見合う権利金の分配を受けうるものとも到底考えられない。現に,この「知的財産権」は平成21年12月2日に登録されたものであるというのに,権利金が発生したことがあるとうかがわせる事情は皆無である。
そもそも,カラオケの機械やカラオケのビジネスモデルそのものには著作権法に定める著作物に該当せず,著作権は発生せず,上記内容の著作物の著作権を小口分割したものを購入したとしても,カラオケで歌われる楽曲や,カラオケ装置などによって生じた利益が自動的に受けられるわけでもない。
加害業者の一つは,「「お金になるか分かりませんが,夢を共有しませんか」と言われて,著作権を「買うわ」という人がいても不思議はない。」と嘯いているようである。しかし,利益を強調して高齢者に巨額の金員を拠出させて多数の苦情を生じさせている現状を見るまでもなく,このような弁解は,ばかばかしいとしかいいようがない。
上記のような「カラオケ著作権商法」は,あからさまな詐欺商法であるが,今回訴えを提起したのは,これを殆ど耳も聞こえない大正15年生まれの独居高齢者に1000万円以上も売りつけたという事案である。もはや,人倫にもとる所業として,厳しく非難されるべき不法行為であるというほかない。
追記1:様々な困難があったが,平成26年12月,無事被害回復をなしえた。悪者に利得を残すことはない。良かった。
追記2:その後,本件商法の主要メンバーらは,同種の「知的財産権証書」(カラオケに関するものではなく,いわゆる「ノンフライポテト」に関する,「油分不要のスナック膨化の画期的方法」というものの著作権らしいが,これが特許権のような価値(それにしても総額150億円の価値があることにするとは,思い切ったことをするものである)を有して高額の配当が得られる,というもの)に口実を付けた詐欺商法を敢行している。これについても早期に決着を見たが,説明資料などはより大胆になっており,摘発をも意に介さないかのような大胆さが垣間見える。