有識者ヒアリング

 昨日,とある行政組織の,有識者ヒアリングというのに出席した。
 詐欺的投資勧誘被害の救済・予防に関する様々な施策が提案され,それらについての意見を求められ,また,どのような施策が効果的なものとして考えられるかについて意見を求められるものである。日弁連や先物取引被害全国研究会などから行政機関等に対して意見書を提出することは良くあることであるが,向こうから話を聞きたいと言ってくるのであるから本気で聞いてくれるのであろうと思い,お引き受けした。
 ヒアリングを受けたのは大学教授と弁護士であり,多くの担当官が列席し,熱心に聞いてくれたと思う。
 それにしても,有識者。実に大人な感じがする。大人は,知識のみを持っていても仕方がない。凄惨な詐欺被害の跋扈という事象が社会に与えている影響に対する正確な理解と,それに対する正しい評価,知識と経験を総合的に動員してする思考,そのための意欲が必要である。
 詐欺商法被害への対抗を名目としてはいるいくつかの連絡会,協議会などがあるが,いずれも,せっかく全銀協や金融庁などの一定程度の影響力を持っている人が参加しているのに,そこでのやりとりを聞いていると,皆まるで他人事のようであり,意欲が全くないとは言わないが,少なくとも熱意があるとはとても感じられない。
 社会のありように責任を持ち,何かをできる地位にある大人は,自己が属する組織の小さな利害をきょろきょろして確保しようとするようではいけない。年寄りがかわいそうな状況に追い込まれているのを放っておいたらいけない。子供達が詐欺商法に手を染めるのを放っておいたらいけない。そんなのは,格好悪い。
 大がかりな法改正は必ずしも必要ない。人的予算的に非現実的な施策も言っていても仕方がない。現行法の下でできることを,被害の救済・予防のために良い方向に向かうように運用を「きちんと」するだけで,詐欺商法被害を巡る社会の状況は劇的に変容させうる。大人達にはそれをする責任がある。