劇場型詐欺商法に関する裁判例(判例時報2174号)

数年前には未公開株商法という詐欺商法が横行していましたが,現在はさらに手の込んだ劇場型詐欺商法と呼称される詐欺商法が猛威をふるっています。

国民生活センターでも次のとおり劇場型詐欺商法を紹介し,「買え買え詐欺」と命名して注意を呼び掛けています。
http://www.kokusen.go.jp/news/data/n-20121004_1.html

『劇場型勧誘の典型例としては、まずこの勧誘に前後して、消費者の自宅にA社のパンフレットや申込書が封筒で発送される。勧誘業者であるB社が「販売会社(A社)の封筒は届いていないか。A社が販売している権利(未公開株、社債など)は大変価値があるが、封筒が届いた個人しか購入することができない。代わりに買ってくれれば権利を高値で買い取る」、または「代理で購入して欲しい。謝金を支払う」などと電話で消費者に勧誘し契約をあおる。

 消費者は、初めのうちはB社の話を信用しないが、何度も(場合によっては複数の業者から)「価値のあるものなので高額で買い取る」と勧誘を受けたり、公的機関(金融庁や国民生活センターなど)をかたる何者からか電話があり「A社は信頼できる会社である」などと説明されるうちに信用してしまいお金を支払ってしまう。そして結局A社、B社ともに連絡が取れなくなり、実質紙切れである権利証券だけが消費者の手元に残る、というものである(図1)。複数の業者が登場し、さも「演劇」のように仕立て上げられた勧誘が行われるため、劇場型勧誘と呼ばれている。そこでは、何かと理由をつけて、実態のはっきりしないような権利などを買わせるシナリオになっている。』

判例時報2174号(76頁)に私が担当した上記劇場型詐欺商法に関する裁判例が紹介されました。

劇場型詐欺商法において電話勧誘に使用される電話は,偽造した身分証明書を提示してレンタルされた電話であることがほとんどであり(レンタル業者は十分な身分確認を行っていない場合が多い),電話勧誘を行った実行犯を特定することは容易ではありません。

そこで,上記裁判例の事案は,詐欺商法に利用された実体がない架空会社の設立に関与した人物に対して,不法行為に基づく損害賠償請求を行った事案です(ただし,本件では電話勧誘の実行行為を行った者も後日明らかになっています。)。

被告は,「会社は設立したが詐欺商法に利用されるとは知らなかった。」と弁解をしましたが,判決では,被告が,名目的代表取締役となる者を集め,多数の会社を設立させ,レンタルオフィス契約の締結,口座の開設を行わせ,その通帳等を回収し,名目的代表取締役に報酬を払っていたという事実から,被告が架空の会社を設立して,その口座を開設することが組織的な詐欺商法の一環として行われていたことを知っていたと認定し,同被告に対し共同不法行為責任を認めました。

このような関与者に対しても共同不法行為責任を追及していくことにより,少しでも劇場型詐欺商法が減少し,あるいは被害の救済がされればと考えています。