判決報告2つ(未公開株商法の資金移転行為者,辞任したと主張する取締役)

 東京地方裁判所平成25年3月25日判決。
 未公開株商法の資金移転を担っていた会社の代表者の責任を肯定したもの。珍しい事案ではないかと思います。下記の太田弁護士の担当事案と似ている問題点についてのものですね。
 当該判示部分は次のとおり。
 「原告は,エコス及びエコスパートナーが,共同して,原告に,エコスの株式を売却し,損害を与えたものであり,エコスパートナーの代表取締役であった被告は,エコスの未公開株商法等による多額の資金を両者の口座間で移動させるという役割を当初から認識し,認識し得たものであると主張する。
 そこで検討するに,被告は,自身が代表取締役を務めていた株式会社エレガンスジャパンを平成21年5月25日にエコスパートナーに商号変更したこと,被告は,同月頃に,萩原の要請に基づき,エコスの資金調達を目的とするファンドの組成に協力するためにエコスパートナーの代表取締役に就任した上,萩原の指示に従って,投資金名目でエコスパートナー名義の口座に入金された多額の金員をエコス名義の口座に移動させるなどしていたことがそれぞれ認められる。
 そして,上記各事実に加えて,弁論の全趣旨を総合すれば,被告は,萩原の要請に基づき,平成21年5月に,エコスの未公開株商法等に利用するために,自身が代表者である会社の商号変更をした上で,エコスが違法に入手した多額の資金を口座間で移動させるという役割(ただし,そのような資金移動が,どのような意味を持ち,どのような意図の下にされていたのかについては,本件全証拠によっても,確定することができない。)を担っていたものであり,この点について当初から認識していたか,又は少なくとも認識し得たものと解するのが相当である。
 以上によれば,被告は,故意又は過失により,エコスの不法行為に加担したものと認められるから,これにより原告に与えた損害について,エコスと共同して,賠償する義務を負うことになる。」

 また,同日同庁の判決。
 未公開株商法の発行会社の取締役について,その辞任を,辞任届を以てしても認められないとしたもの。被告側から良くなされる反論を排斥した事例判決として参考になるところがあるのではないかと思います。
 当該判示部分は次のとおり。
 「被告は,原告が平成21年7月24日に本件株式を購入するより前の同年6月16日には,齋藤(代表者)に対し,本件会社の取締役を辞任する旨を伝え,辞任のための手続をするよう求めたが,手続がされないため,その後も,何度も辞任のための手続を執るよう求めていた旨主張する。
 この点,被告等に対して提起された別件の損害賠償請求訴訟の期日において,齋藤が,平成21年6月16日に被告から辞任届を受け取ったが,費用がなかったため辞任登記をしなかったと述べたことについては,当事者間に争いがない。
 しかしながら,齋藤は,上記期日の後に,被告の辞任登記をした際には,辞任の時期を同年11月4日としており,齋藤の上記発言はにわかに信用することができないといわざるを得ない。
 また,被告は,平成21年6月16日以降,繰り返し,辞任の手続をするように求めていた証拠として,辞任届や配達証明書を提出するが,当該証拠は,本件会社による受領の有無やその時期については必ずしも明らかでないものであり,これらをもってしても,原告が本件株式を購入するより前に,被告が本件会社に対して,辞任を届け出ていたことを認めるには足りないといわざるを得ない。」

 追って,HPでご紹介する予定です。