金融商品取引まがい詐欺商法の敢行には,管理担当者の存在は不可欠である。したがって,管理担当者は相応の責任を負わしめられるべきである。
この点について,本日判決(控訴審判決,東京高等裁判所平成25年4月11日判決)があった。
判決は,「控訴人は,本社顧客サービス室の肩書を持って管理担当者として顧客からの苦情処理等に当たっていたものである。本件においても,被控訴人の代理人弁護士との対応をしたというのである。そして,控訴人の経歴や社内での地位に照らせば,控訴人は,投資取引について相当な知識を持ち,その知識や経験を顧客への苦情への対応に利用することを期待されていたと考えられるのであって,会社ぐるみで組織的に敢行されていた顧客からの金員領得のシステムに組み込まれていたとみるべきである。」として,在籍期間中に被害者が業者に交付した金額(と弁護士費用)について損害賠償責任を負うとして管理担当者の控訴を棄却した。
なお,本件で違法であるとされた取引は,CO2排出権取引である。
当該管理担当者は,役員でなく,当該事件の被害者とは直接には何らの接触もしておらず,当職のところに交渉にやってきて名刺を交付したことから管理担当者であることが発覚したものであった。しかし,この種の詐欺商法においては,多数の紛議が頻発することが予定されており,この種商法に通じた者がこれに対応する「顧客管理部」「管理担当者」などの役割を担い,さらには弁護士対応までをも行っていることは常識に属する事柄である。会社の実情(その行っている商法の違法の程度・勧誘の実際)を知悉していなければ苦情処理ができないことも容易に見うる事柄である。勧誘担当者以上に悪質な詐欺商法への関与の度合いはむしろ大きいとも言えるのであり,損害賠償責任を負わせた本判決は,けだし,正当である。