判決報告(FX取引の「キャッシュバック金」に関する初判断)

 本日,興味深い判決がありました。
 本件は,ワイジェイFX株式会社(当時の商号:株式会社サイバーエージェントFX。ヤフー株式会社の100%子会社)が,平成25年5月1日から31日まで行っていた,取引高に応じたキャッシュバック金を支払う旨のキャンペーン期間中において,被告が原告の取引を「ツール等取引」にあたるなどとして原告の口座を強制解約し,キャッシュバック金の支払いを行わないので,これを請求したものです。
原告:平成21年からFXトレーダーをしている都内の30代男性
原告代理人:荒井哲朗,(主任)浅井淳子
請求金額:190万円
事件名:キャッシュバック金請求事件(!これだけでもおもしろいじゃないじゃないですか!)
 
 判決(東京地判平成26年6月19日,高瀬保守裁判官)は,一般に流布されているチャートなどを用いることや手動で行っていたと考えられる取引は約款にいうシステムを利用するなどの「ツール取引等」という不適正取引ではないとして,これがあったとしてキャッシュバック金の支払いを拒む業者の行為は信義則に反するものとして許されないとして原告の請求を全部認めました。
 FX取引業者は利益を出す顧客を閉め出してしまうという姿勢を採っているのではないかと思われる節があり,あの手この手で利益を出している顧客を閉め出そうとしているのではないかと感じられます。本件もその一類型です。同様の問題は相当数報告されています。
 本判決は,この,現代的な事象・問題に関する初の司法判断であり,社会的影響も大きいと思い,ご報告する次第です。
 自ら頻回取引を奨励するキャッシュバックキャンペーンを打ち出しながら,利益が出ている顧客に対して手動で頻回取引ができるはずがないなどと,まさに言いがかりを付け,業者が恣意的に約款を適用して約束した金銭を支払わないという行為を牽制し,FX取引の健全性を多少なりとも是正することとなる,意義のある判決だと考えています。
 この事件の過程で原告方に検証的実験に赴き,私自身もやらせてもらったところ,3秒で6000円相当の利益を上げるという取引を初回の挑戦で成し遂げるという,珍事もありました。トレーダーへの転身を考えるには現在のところ至っていませんが・・・

 今日はFX尽くしです。FXの取引所取引であるくりっく365の南ア円誤レート配信問題に関し,金融取引所とコメルツバンクを被告としている事件で1回目の証人尋問期日でもありました。

 いや,疲れました。が,いい日です。