アーバンコーポレイション社の有価証券報告書等虚偽記載にかかる集団訴訟について弁護団の代表を務めていました。同事件は最高裁で逆転敗訴的差戻(差戻控訴審では悪くない和解で落ち着きましたが)を受け,暫く意気消沈していました。平成24年末のことです。負け方も大事と思って被上告人席で震える声で弁論したことを思い出します。
同事件の判決(最判平成24年12月21日)は,広く公刊され,金融商品取引法判例百選にもセレクトされ,様々な方面の議論・研究の対象になっていましたが,最判を深く検討したとはいいがたい内容の分析の後で最判を(いわば後出し的に)支持するというものが少なくありませんでした。判決自体には,私は今でも,妥当性にも説得力にも乏しいとの評価を捨て切れていませんでしたので,大いに不満でした。
さて,今般,判例時報最新刊2235号151頁に,同判決についての和田宗久早稲田大学教授の判批が掲載されていました。和田教授は,「発行会社と関わりのない事情に基づく場合を別として,金商法21条の2第4項又は5項に基づく減額は謙抑的にしかなされるべきではない」との立場に立たれ,「基本的には,本件再生手続開始の申立てを信用毀損の一種であると捉えた場合,そのような減額はなされるべきではないと考える。」,「(仮に減額を行うとしても)それによる減額は大幅には認められるべきではないと思われる」と述べられています。そのお考えは我々弁護団が主張し続けていたものであり(複数の控訴審判決でも支持されたものであり),やはり我々は間違ってはいなかったのだとの思いを強くし,有価証券等虚偽記載事件事案の冬の時代は,案外早くに雪解けを見るのではないかと,希望の光を見た思いがしました。