1 判例時報に掲載
先日,ベトナムの未公開株へ投資を謳うファンドに関する事件についての控訴審判決(東京高判平成29年4月26日)が,判例時報2370号74頁に掲載されました。
裁判例は,弊所のHPに掲載してありますので,ご参照ください。
本事件では,複数のベトナム未公開株ファンドが組成され販売されましたが,そのうち一つは信託会社から販売されました。
その後ファンドは破綻し信託財産管理人が選任され,その調査の過程で,実際にベトナムの未公開株は購入されていたこと,そのうち一部は上場していたことなどが明らかとなりました
要するに,本件は全くの架空取引ではなかったという事案でした。
一方で,原告の手元にあった関係資料を参照にしつつ,その他裁判(立証)の過程で,以下の事実が判明しました。
①資金の流れについての原告が伝えれれていた事実と異なっていたこと
②約3億円の資金の使途が明らかではないこと
③株式購入代金として使用された金額は,出資金として集めた金額の1/5に過ぎないこと
東京高判平成29年4月26日(控訴審判決)は,上記①乃至③について,被告らは,「投資家にとって極めて関心が高いと考えられる実際の未公開株式購入額やこれ直接影響する高額の仲介手数料の存在及びその額について何ら説明がなかったのである」から説明義務は尽くされていなかったとして,被控訴人らの行為に違法性を認めました。
また,勧誘資料等の客観的資料を踏まえても,出資金の2割程度に過ぎない株式では利益を生じる可能性は極めて低いといわざるを得ないともしました。
上記③株式購入代金として使用された金額が出資金の1/5に過ぎないという事情からは,本件ファンドは損益を出資者に適切に帰属する前提を欠いているといえ,金融商品として備えるべき条件を欠いたものであったといえます。
東京高裁は,その点について正解た上で,ファンドの資金の流れについても説明義務を認め,被控訴人らの行為に違法性を認めたことは評価できると思います。
実は,当該事件,原判決(一審の判決)は,原告の請求を棄却しました。
理由は,以下のとおりで,到底受け入れがたい不自然,不可解なものでした。
株式購入代金として使用された金額が出資金として集めた金額の1/5であったとしても,そもそも出資金の全額ないしそれに近い金額がベトナム国内の未公開株式の購入代金に充てられることは当初から予定されていなかった
この点について,東京高裁は,原判決(一審の判決)の不自然,不可解な判断を明確に修正した上で,上記判断をしました。
控訴審での逆転勝訴となったのはよかったですが,本来は原審(一審)が事案を正確に把握してなすべき判断であったと,私は今でも思っています。
原審の判断で終わるわけには絶対にいかない事件であったので,控訴審での逆転には留飲を下げましたし,また,判例時報への掲載は大変うれしく,今後の励みにもなりました。
2 今月の1枚
只見線:キハ40普通列車 会津桧原-会津西方
夏の日の早朝,奥会津の地で現れた奇跡でした。
場所は,熊さん注意の立看板がある森の中を川縁へ辿って行って見つけたとっておきの場所です。
奇跡の条件は,快晴,順光,無風で鉄橋と列車が水鏡に,そしてそれが撮影可能な休日に現れること…
そんな夢にまで見た情景が,数年越しでとうとう現れた瞬間でした。
これまで列車通過直前にお魚が飛び跳ねて水鏡が崩れて何度も撃沈し,トボトボと帰宅したことがあることは秘密です(笑)。
只見線:只見線新緑号 只見-大白川
もう一つ,奥会津で撮影した写真を。
場所は田子倉ダムにかかる鉄橋,背後に聳えるのは残雪が印象的な浅草岳です。
また時間が取れたら,絶景をゆっくり眺めてみたいですね。