先日,弁護士になって初めての刑事事件で,公判で最終弁論を終え結審し,一区切りを迎えました。
この事件は,当番弁護士として派遣され,被疑者国選事件として,捜査段階から受任し,再逮捕などもあり,随分長引きましたが,先日結審し,後は判決を待つばかりです。初めてのことで,右も左も分からず,手探りでここまできたという感じです。
思えば初任の刑事だったので,難事件が配点されるなど全く思っておらず,おそらく配点されるのは自白事件で,何とか身体拘束を解放するように動く,公判では情状弁護を中心とした事件がくる,家族の人達と協力して少しでも罪が軽くなるように頑張る,そして執行猶予がついたら,みんなで「良かった」と喜びつつも,「でも更正に向けてはこれからが大切なのです」なんて弁護士としてアドバイスをする,そんな事件が配点されるイメージでいました(実際,周りの同期は皆,そのようなことを大きな問題点とした事件を配点されていました。)。
しかし,いざ接見に行ってみると,全面否認!!。「先生,自分はやっていません」ということでした。初めての刑事事件で全面否認,最初はびっくりもしましたが,これも何かの縁なので,「無罪を目指して頑張ろう」そう腹を決めて,連日接見に向かいました。本人の身体拘束の解放を求めて,何度も準抗告を行いました(裁判所に準抗告の書面を提出に行くと,「また先生ですね」と言われたのも,印象深い出来事の一つ。)。結局,一度も認められませんでしたが,本人は「そこまでやってくれてありがとうございます。」と,とても喜んでくれました。準抗告にはこのように,本人を励ますという効果もあるのだということを発見しました。
起訴後の公判でも,初めてのことばかりで分からないことが多かったですが,本人は有罪か無罪のかかった場面なので,夜遅くまで検討したのが思い出されます。公判の最終弁論で読み上げる原稿(「弁論要旨」といいます)は,この3連休で記録と格闘しつつ書き上げました。今回の人は,私が,ちょっとしんどいなと思っていると,なぜか同情を誘うような手紙をタイミング良く送ってくる人で,その度に,「そうだよな,頑張らないとね」と何度も思ったものです。
判決はまだですが,色々あった印象深い,忘れ得ぬことになりそうな初任の刑事事件でした。