今日,最高裁で弁論をしてきた。わたくしは最高裁に事件のために行ったのは4件目になるが,被上告人席で弁論をしたのは初めてである。被上告人代理人としての弁論。そう,高裁で勝訴し,それが最高裁で逆転敗訴することがほぼ確実という状況での弁論である。最高裁の書記官の接遇は,丁寧で優しく,まさに敗軍の将に接するそれであった。
最高裁での(民事の)弁論は,上告人代理人としてする時には,弁護士にとっての晴れ舞台であろう。他方,原判決を見直されるために開かれる弁論期日で弁論をすることは,つらいことである。しかし,今回の事件について最高裁はおそらく,原判決を破棄することはあっても,自判することはないものと思う。そうだとすれば,「負け方」は重要である。どういう判断で「負ける」のか,次に繋がる何らかのものが判決文に表れないか。「負けるための弁論」であっても,決しておろそかにしてはなるまい。
ただ,そうなると,やはり緊張がいや増す。ではどうすればよいか。不謹慎であるが,今回のわたくしなりの対処方法は,次のとおりのものであった(すみません,ふざけているばかりではありません,しかし,いずれにせよ,今日くらい,許して下さい・・・)。
まず,口頭弁論要旨は,「であります調」で作成して推敲を重ね,読みやすいようにいつもよりフォントを大きくしてプリントアウトしたものを念のために複数部持って行く。
次に,緊張して口調が早くなりそうになったりしたときには,なじみのない方言を使うことにする。そうすると,自分の一生懸命さから来る「固さ」がとれる(気がする)。分かりにくいと思うが,「しょおけんしじょおうのこうせいが」の「まん中のじ,や,せ」とかにアクセントを置くのである。ほんのわずか。ごく軽く。当然,やり過ぎてはいけない。
また,パワーアイテムを身につけておくことも有用である。わたくしは今回,仮面ライダーウィザードが変身する時に用いる赤い魔法の指輪を握りしめて行った。「絶望を希望に変える」。その力にあやかろうとしたのである。
かくして,凛々しげな弁論を無事に終えた。
平成24年12月21日付記:力及ばず、本日、最高裁により、何の引っかかりもない判決が言い渡された。徒労感に打ち拉がれている。