2.ソフトバンクモバイルの調査嘱託に対する回答拒否事件

(東京地方裁判所平成24年5月22日判決,
東京高等裁判所平成24年10月24日判決)

 調査嘱託は,国民の裁判を受ける権利を実効あらしめる重要な制度であるが,近時その機能不全が危機感を持って問題視され,同様の問題意識を持って論じられる弁護士法23条の2に基づく照会制度に対する報告義務の問題と併せて議論が高まり,本件訴訟も,多くの方面から強い関心を以てその帰趨が注目されていたものである。

 1審の結論は,損害賠償請求について棄却,回答義務確認の中間確認の訴えについて却下,というものであるが,判示内容は,ソフトバンクモバイルが23条照会に対して報告を拒否する理由としているところが全て排斥されており,23条照会実務にとっても興味深いところが多くあるものと評価されている。

 控訴審は,故意過失を認められないとして結論として責任を否定したものの,「確かに,調査嘱託に対する嘱託先の回答義務は,前記のとおり当該調査嘱託をした裁判所に対する公法上の義務であり,調査嘱託の職権発動を求めた訴訟当事者に対する直接的な義務ではないので,上記公法上の義務に違反したことが直ちに上記訴訟当事者に対する不法行為になるというものではない。しかし,調査嘱託の回答結果に最も利害を持つのは調査嘱託の職権発動を求めた訴訟当事者であるところ,この訴訟当事者に対しては回答義務がないという理由のみで不法行為にはならないとするのは相当ではないというべきである。したがって,調査嘱託を受けた者が,回答を求められた事項について回答すべき義務があるにもかかわらず,故意又は過失により当該義務に違反して回答しないため,調査嘱託の職権発動を求めた訴訟当事者の権利又は利益を違法に侵害して財産的損害を被らせたと評価できる場合には,不法行為が成立する場合もあると解するのが相当である。」と判示している。

 本判決にはいくつかの点で首肯し得ない部分があるが,しかしながら,上記に紹介したような判示は,実務を前進させる大きな可能性を秘めており,歓迎できるものである。
 東京高裁でこのような判断が示されたことを受けて,多方面での多様な取り組みに影響を与えることが期待されるし,何より,それらを待つまでもなく,ソフトバンクモバイルが運用を適正に是正する自浄能力を有していることを期待したい。

判決PDFAdobe_PDF_Icon1.svg(控訴審、確定)
⇒金融・商事判例1404号27頁
⇒判例時報2168号65頁
⇒判例タイムズ1391号241頁
⇒金融法務事情1988号122頁

判決PDFAdobe_PDF_Icon1.svg(1審,被害者控訴)
⇒金融・商事判例1404号35頁
⇒判例時報2168号67頁

1.弁護士会照会に対する報告義務
(東京高等裁判所平成22年9月29日判決ほか)
2.ソフトバンクモバイルの調査嘱託に対する回答拒否事件
(東京地方裁判所平成24年5月22日判決,東京高等裁判所平成24年10月24日判決)
3.保険証券番号不特定執行
(東京高等裁判所平成22年9月8日決定)
4.仮装離婚と財産分与の虚偽表示による無効・債権者代位による不動産移転登記抹消登記手続請求
(東京地方裁判所平成25年9月2日判決,東京高等裁判所平成26年3月18日判決)
詐欺的業者の首謀者が妻との離婚を仮装して財産分与をした事案について,離婚及び財産分与は通謀虚偽表示により無効であるとして債権者代位により居宅不動産の所有権移転登記抹消登記手続請求を認容した事例 5.訴えの提起における当事者の特定・住所地の記載されていない債務名義の強制執行の方法等
(東京高等裁判所平成21年12月25日判決ほか)
6.金融商品取引業者と取引履歴の開示
(東京地方裁判所平成20年9月12日決定ほか)
7.詐欺的取引と裁判管轄(移送の可否)
(東京高等裁判所平成23年6月1日決定)
8.支店不特定執行
(東京高等裁判所平成23年3月30日決定ほか)
9.支店不特定執行(2)
(東京高等裁判所平成26年6月3日決定)
10.預金債権の時間的包括的執行
(奈良地方裁判所平成21年3月5日決定)
11.詐害行為取消訴訟
(山形地方裁判所平成19年3月9日判決)