預金債権の差押えにおける取扱支店の特定の要否(4)

(続き)
(4)取扱店舗を特定(限定)しない差押命令の申立にあたっては,「取扱店舗を特定しない(または複数の支店を特定範囲とする)預金債権の差押えに対する金融実務の実情?全銀協アンケート調査をもとにして?」全国銀行協会業務部次長阿部耕一において,この種の申立に円滑に対応するために望ましい検索事項として「住所」・「氏名」に加えて「生年月日」,「読み仮名」を挙げるものが最も多かったとのことであるから,これらを一義的に特定することが慎重に検討されて良い(もっとも,住所を列挙するためにはこれを証する公的文書を提出する必要があるし,住所を限定することによってそうでない場合には存在するものと把握されるであろう債権が差押え対象から外される危険がある。読み仮名についてはこれを確実に知る方法もなく,あえて真実の読み仮名とは異なる読み仮名を届けている預金者もあり,同じく差押え対象から外されてしまう危険を高めることにもなりうる。)。
 なお,支店間の順序付けは支店番号でするのが第三債務者にとっても最も便宜であると考えられる。
 また,差押債権目録の順位付に関する条項(「複数の店舗に預金債権があるときは,支店番号の若い順序による。」という記載)は,申立債権者の利益のみを考えるのであれば,先行する差押え等の存否による順序付け,円貨建て預金・外貨建て預金の別による順序付け,預金の種類による順序付け,同種の預金があるときの口座番号・預金番号による順位付けに続く位置(差押債権目録の末尾)に置くのがよいということになるが,第三債務者の負担を慮ると,これらの順序付けの冒頭に置くのが望ましい。(続く)(荒井哲朗)