14.サンワ・トラスト

(東京地方裁判所平成18年1月24日判決,
東京地方裁判所平成18年8月30日判決)

 外国為替証拠金取引について,取引の終了を申し出たところ,架空の取引が後付で作出されたと認定され,損害賠償請求が全部認容された事例

 平成16年8月5日に業者に電話をかけて取引をやめると告げて了解した旨の返事を得たにもかかわらず,翌日電話をしてみると,「あなたのお金はもうありません。」。驚く被害者に対して,「2か月前に取引をしたじゃないですか,それで2700万円損が出ていますから。」という従業員(業者取締役)の言葉があり,数日後,2か月前に取引をしたという報告書が郵送されてくる。今更なんでこんなものが,とあわてても,後の祭り。「こんなの知らない」,「でも損が出てますから」というやり取りで埒があかないうえ,精算金として残っているという500万円も何だかんだと言って返金しようとしない。結局,800万円を受領して一切の精算をするという和解書を作らされてしまったという事案。誰がどう考えても違法であることは明らかである。しかし,裁判所が,このようなあからさまな違法を正面からきちんと認定してそれが違法であるという当然のことを言い切ってくれたのはうれしい。外国為替証拠金取引業者というものはここまでのことさえも厭わない存在であったのだ,ということが裁判例にきちんと残されなければならない。そして,このような悪質な被害は,「私的差金決済取引も法律で禁止されていなければ構わない」という誤った認識が広まったこと,同旨の判断を示す裁判例すらあったことに起因することに,今更ながらに想到される必要がある。

 なお,破産会社に対する債権確定請求訴訟の判決は,本判決同旨を言う上,「さらに観点を変えれば,岡田及び藤田によって,夫が交通事故の保険金として受け取った5000万円程度の預金のうちのかなりの額を本件取引につぎ込まされ,被告藤田において,架空である本件問題取引を作出した上で,岡田及び藤田において,和解に合意しなければ精算金の支払いを拒否するという方法で,強いて原告に本件合意をさせ,それによって,サンワ・トラストのいう和解金という名称で返還を受けた金額が本件問題取引によって作出された損失額に比較してかなり小額であることなどの諸事情を考慮すれば,本件合意をもって,原告のサンワ・トラストに対する不法行為に基づく損害賠償請求権が消滅したと主張することは,権利の濫用に該当するというべきである。」と判示している(東京地方裁判所平成18年8月30日判決)。和解合意の効力について,「権利の濫用」を理由に否定した裁判例はほとんど見られず,今後の被害救済実務に参考になるものと考えられる。

判決PDFAdobe_PDF_Icon1.svg(役員らに対するもの一部確定,業者の一部控訴)
⇒先物取引裁判例集43巻66頁

判決PDFAdobe_PDF_Icon1.svg(債権確定訴訟,確定)
⇒先物取引裁判例集45巻392頁

判決PDFAdobe_PDF_Icon1.svg(控訴審判決,確定)
⇒先物取引裁判例集46巻320頁

1.アトランティック・ファイナンシャル・コーポレーション
(東京地方裁判所平成20年7月16日判決)
ロスカット・ルールに関する重要な初判断 2.ワイジェイFX(旧サイバーエージェントFX)
(東京地方裁判所平成26年6月19日判決)
強制解約・キャッシュバック金の不払いに関する初判断 3.アルファエフエックス
(東京地方裁判所平成22年4月19日判決)
区分管理を怠った業者の役員らの責任に関する判決 4.幸せwin,大橋ひかる,マネースクウェアジャパン
(東京地方裁判所平成20年10月16日判決)
アフィリエイトに関して,FX業者の責任も肯定したもの 5.コメックス
(東京地方裁判所平成22年5月25日判決)
認知障害により取引状況などを再現できない事案において参考になる 6.シー・エフ・ディー
(東京地方裁判所平成18年4月11日判決,東京高等裁判所平成18年9月21日判決)
私的差金決済契約の違法性を初めて正面から認めた東京高裁の判断 7.リベラインベスティメント
(東京地方裁判所平成24年2月24日判決)
関連会社への資金流用などに関するもの 8.東京シティホールディング
(東京地方裁判所平成19年1月30日判決)
FX業者の区分管理責任に関するもの 9.ハーベスト・フューチャーズ
(東京地方裁判所平成17年7月12日判決)
公設の先物業者が行っていた外国為替証拠金取引について取引自体を違法であると判断したもの 10.日本エフエックス
(東京高等裁判所平成18年11月29日判決,東京地方裁判所平成18年6月8日判決)
外国為替証拠金取引業者の区分管理の義務,小会社の監査役にも責任を認めたもの 11.ICC,インターナショナル・カーレンシー・チェンジャーズ
(東京地方裁判所平成17年10月17日判決,東京地方裁判所平成18年4月27日判決)
かつての外国為替証拠金取引商法被害事案 12.キャピタルベネフィット
(東京地方裁判所平成17年11月11日判決)
かつての外国為替証拠金取引商法の仕組み自体の違法性を早い時期に指摘したもの 13.リベラインベスティメント
(東京地方裁判所平成17年2月1日判決)
外国為替証拠金取引業者が清算金の返還すら拒んだ事例 14.サンワ・トラスト
(東京地方裁判所平成18年1月24日判決,東京地方裁判所平成18年8月30日判決)
後付けで取引をした外観を作出して金銭を騙取するという著しく悪質な事案。和解合意の効力について「権利の濫用」を理由に否定している珍しい例 15.日本エフエックス
(東京地方裁判所平成19年1月24日判決)
外国為替証拠金取引の取引自体の違法性を端的に指摘するもの 16.アイ・エス・テクノロジーほか(121ファンド関係)
(1事件:東京地方裁判所平成25年11月13日判決,東京高等裁判所平成26年7月10日判決,2事件:東京高等裁判所平成26年9月17日判決,東京地方裁判所平成25年11月28日判決)
収納代行業者であると強弁した業者や,詐欺商法のナンバー2の地位にあった者の責任を正しく指摘するもの 17.有限会社リンク(121ファンド関係)
(東京地方裁判所平成24年4月23日判決)
中間代理店の過失を取引の荒唐無稽さから導いたもの 18.エイ,Truth Company(121ファンド関係)
(東京地方裁判所平成25年1月21日判決)
121ファンド商法の主要な代理店であった業者らの責任 19.エスペイ(121ファンド関係)
(東京高等裁判所平成24年12月20日判決,東京地方裁判所平成24年6月22日判決)
過失相殺をした1審の判決を取り消した控訴審判決